- 勤怠・給与報酬
パート・アルバイトの遅刻・欠勤に罰金は合法?違法性と効果的な対策を徹底解説
2025/5/26
小さな会社や店舗でパート・アルバイトの遅刻や無断欠勤に頭を悩ませていませんか? 「遅刻したら罰金を徴収したい」と考える経営者の方もいるかもしれません。しかし、それは法律的に許されるのでしょうか。本記事では、労働基準法に基づく罰金制度の違法性(第16条・第91条)や合法的な給与控除の条件、懲戒処分としての減給の要件、就業規則の整備と周知義務、そして違法な罰金制度を設けるリスクについて分かりやすく解説します。さらに、遅刻・欠勤を減らすための実務的で効果的な改善策(インセンティブ制度・皆勤手当、柔軟なシフト調整、代替スタッフの確保など)も紹介。最後によくある質問(FAQ)形式で疑問にお答えし、読者の検索ニーズに幅広く対応します。法律を守りつつ職場の勤怠管理を改善したい中小企業の経営者・店長の方はぜひ参考にしてください。
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- パートの遅刻・欠勤に罰金を科すことは違法?【法律の基本】
- 合法的に給与を控除・減額するための条件とは?
- 違法な罰金制度に頼るリスク(労基署の指導・訴訟など)
- 遅刻・欠勤を減らすための効果的な改善策【前向きなアプローチ】
- よくある質問(FAQ)
パートの遅刻・欠勤に罰金を科すことは違法?【法律の基本】
結論から言えば、パートやアルバイトの遅刻・欠勤に対して一律の罰金(過料)を科すことは労働基準法違反です。就業規則などで「遅刻1回につき○円の罰金」などと定めても、そのような罰金制度自体が無効となる可能性が高いのです。まずは法律上、何が禁止され何が許されているのか基本を押さえましょう。
違約金・罰金の禁止(労働基準法第16条)
労働基準法第16条では、使用者(会社)は労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額をあらかじめ予定する契約をしてはならないと明記されています。これは、例えば「無断欠勤1回につき1万円の罰金」や「◯回遅刻したら◯円の違約金を支払わせる」といったルールは法律上許されないことを意味します。あらかじめ一定の事象(遅刻・欠勤など)に対する罰金額を取り決めておくこと自体が禁止されているのです。
労基法16条が禁止するのはあらかじめ定めたペナルティです。遅刻や欠勤を理由に罰金を給料から天引きしたり、従業員に別途支払わせることは、この規定に違反し原則として違法になります。違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。決して軽視しないようにしましょう。
減給制裁にも上限あり(労働基準法第91条)
「罰金」は違法ですが、「減給処分」としてならお金を差し引けるのでは?と考える方もいるでしょう。たしかに労働基準法第91条では、就業規則で定める懲戒処分としての減給について一定の範囲で認めています。しかし、その場合でも減給額には上限があります。
- 1回の減給額は、平均賃金の半日分(1日あたりの平均賃金の1/2)を超えてはいけません。
- 複数回の減給の総額は、1つの賃金支払期(通常1か月)の賃金総額の10分の1を超えてはいけません。
つまり、仮に懲戒処分として減給する場合でも、「一度の違反で罰金○万円」などと重い制裁を科すことはできず、上記の範囲内に収める必要があります。例えば月給20万円の従業員なら、1回の減給上限は約5,000円、1か月の減給総額上限は2万円程度という計算になります。これ以上の減給を定めても労基法違反で無効となります。
重要なのは、減給処分であっても勝手に科せるわけではないということです。後述するように、就業規則に減給(制裁)の定めと対象となる行為が明記されていて、かつその就業規則が従業員に周知されている必要があります。また、処分が重すぎる場合は懲戒権の濫用と判断され無効になることもあります(労働契約法第15条)。減給はあくまで最終手段と考え、乱用しないことが大切です。
賃金全額払いの原則とノーワーク・ノーペイ
初めて知る方には「罰金NG」と聞くと戸惑うかもしれませんが、遅刻・欠勤した場合にその分の給与を支払わないこと自体は問題ありません。これは労働契約の基本であるノーワーク・ノーペイの原則(働いていない時間分の賃金は発生しない)によるもので、労基法上も明確に認められています。実際、「遅刻○分したらその分給与カット」という扱いは、働いていない時間の賃金を支給しないだけなので合法です。例えば1時間遅刻したら1時間分の時給を差し引くのは当然認められます。
しかし注意したいのは、働いた分の賃金まで勝手に減らすことは許されないという点です。たとえば「10分遅刻したら30分分の給与をカットする」「遅刻1回で罰として1日分無給にする」等は、労働者が実際には提供した労働に対する賃金まで支払わない行為となり、賃金の不当控除として違法になります。労働基準法には「賃金はその全額を労働者に支払わなければならない」(賃金全額払いの原則)という規定もあるため、会社が勝手に労働時間を切り捨てたり、ペナルティ名目で余分に控除することはできません。
まとめると、遅刻や欠勤に対して会社ができるのは「その間の給与を支払わない(ノーワーク・ノーペイ)」「就業規則に基づき一定額の減給処分を科す(要件・上限あり)」までです。あらかじめ決めた罰金を徴収することや、働いた分まで含めて給与カットすることは違法なので避けましょう。
合法的に給与を控除・減額するための条件とは?
では、罰金はNGとして遅刻や欠勤に対応する合法的な方法は何でしょうか?ポイントは就業規則と適正な手続きにあります。会社が従業員にペナルティを課すには、労働者との契約関係や労基法の枠内で行う必要があります。以下に合法的に給与控除・減給を行うための主な条件を整理します。
就業規則への明記
会社で懲戒処分として減給を行う可能性があるなら、就業規則に「減給処分ができる」旨と「減給の対象となる行為」を具体的に定めておかなければなりません。就業規則とは会社内のルールブックであり、従業員10人以上の企業では作成・届け出が義務付けられています。たとえ10人未満の職場でも、ルールを明文化しておくことはトラブル防止に有効です。
労働者への周知
就業規則は作成するだけでなく、従業員全員に内容を周知させる義務があります(労基法第106条)。周知とは、従業員がいつでも見られるように掲示・備え付けるか配布することです。就業規則を社員に渡さず秘密にしていては、その規則に基づく処分は無効になる可能性があります。特にペナルティに関わるルールは入社時に説明し、常に確認できる状態にしておきましょう。
減給処分として行う
前述のとおり、罰金(違約金)ではなく「懲戒処分としての減給」という位置づけである必要があります。減給処分は戒告・出勤停止・解雇などと同じ懲戒の一種であり、就業規則上の制裁手段です。したがって、減給処分を科す理由が就業規則の懲戒事由に該当していることが条件となります。例えば「無断欠勤を○回繰り返した場合は減給処分に処す」等の規定があり、その社員の行為がそれに当てはまる場合のみ減給できます。
手続きの遵守
就業規則によっては、減給など懲戒処分を下す際に事前に本人へ弁明の機会を与えるなど手続きを定めている場合があります。処分を行う際は、規則で定めた手順を踏んでいるか確認しましょう。また、減給通知書の交付など社内手続きを設けている企業もあります。適正な手続きを経ず唐突に減給するとトラブルになりかねません。
減給額の上限遵守
もちろん減給額は労基法91条の上限内でなければなりません。就業規則に法定以上の罰金額を書いていても無効です。上限を超える減給や罰金は認められませんので、「遅刻1回につき日給全額カット」など行き過ぎた規定は削除・修正が必要です。
以上を満たして初めて、法律の範囲内で給与の一部控除(減給)を行うことが可能となります。裏を返せば、これらの条件を欠いた減給・罰金はすべて違法となり、従業員から返還請求を受けたり労基署から是正指導を受けるリスクがあるので注意してください。
違法な罰金制度に頼るリスク(労基署の指導・訴訟など)
「多少法律に触れても罰金で締め付けたい…」と考えるのは大変危険です。違法な罰金制度を導入するリスクについて理解しておきましょう。
労働基準監督署からの是正勧告・罰則
労基法違反が発覚した場合、まずは労働基準監督署から是正勧告や指導が入ります。例えば従業員から「罰金を差し引かれた」と通報があれば、監督署が調査に来て違法な就業規則の改訂や未払い賃金の支払いを指導するでしょう。悪質な場合や是正に応じない場合、労基法第16条違反について6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されることもあります。また、減給の上限(91条)違反も刑事罰の対象で、30万円以下の罰金となり得ます。企業イメージにも関わる深刻な事態です。
未払い賃金の支払い命令・訴訟
違法な罰金によって減らされた給与は「未払い賃金」とみなされます。労基署から是正勧告を受けた時点で、会社は過去に遡って違法控除分を全額支払わされるでしょう。従業員側も「違法罰金分を返せ」と訴訟や労働審判を起こすことができます。当然ながら会社側が負ける可能性が高く、未払い賃金の支払い+遅延利息や慰謝料を命じられるケースもあります。法廷闘争になれば時間も費用も奪われ、社内の士気も下がってしまいます。
従業員との信頼関係の悪化
罰金制度は一見「罰を恐れて規律が守られる」ように思えますが、従業員のモチベーション低下や反発を招きがちです。「遅刻したら給料減らされた…」という不満は職場の士気を下げ、人材流出にもつながります。特に若いアルバイトはSNS等で不満を発信しやすく、会社の評判を損ねるリスクもあります。それよりは後述するようなポジティブな対策で勤怠改善を図る方が、長期的に見て建設的です。
優秀な人材確保への悪影響
罰金で縛る企業風土は、これから人材を採用する際にもマイナスです。求職者は口コミサイトなどで企業の評判をチェックします。「罰金を取られるブラックバイト」などと噂が立てば、信頼できない職場と見なされ人が集まりにくくなるでしょう。中小企業にとって人材確保は命綱です。不適切なペナルティ制度で人材獲得競争に不利になっては本末転倒です。
以上のように、違法な罰金制度はデメリットしかありません。では具体的に、遅刻や欠勤を減らすにはどんな実務的対策が有効なのでしょうか?次の章で詳しく見ていきましょう。
遅刻・欠勤を減らすための効果的な改善策【前向きなアプローチ】
罰金で縛るのではなく、前向きなアプローチでパート・アルバイトの遅刻や欠勤を減らす方法を考えてみましょう。従業員の事情に配慮しつつ職場全体の出勤率を高める工夫をすることで、結果的に無断欠勤や頻繁な遅刻を防止できます。以下に実務で役立つ改善策を紹介します。
インセンティブ制度の導入(皆勤手当・精勤手当の活用)
罰を与えるより、報いる方が効果的です。そこでおすすめなのが、皆勤手当などのインセンティブ制度を設けること。皆勤手当とは「一定期間(通常1か月)無遅刻・無欠勤だった従業員に支給する手当」で、企業が任意に設定できます。遅刻や早退・欠勤のない出勤を奨励する目的で導入されるもので、月単位で数千円程度を支給するケースが一般的です。
メリット
皆勤手当を支給すれば「せっかく皆勤手当をもらえるなら休まず頑張ろう」という風土が生まれ、従業員の出勤率向上が期待できます。実際、毎日全員が出勤すれば業務が計画通りに回り、他の人の穴埋め負担も減ります。周囲の負担増加による不満や離職のリスクも防げるでしょう。また、「ちゃんと出勤すればご褒美がある」という正の動機づけによってモチベーションも高まり、結果として職場全体の士気や生産性向上にもつながります。
注意点
皆勤手当を導入する際は就業規則への明記が必要です。支給条件や金額を明確にし、従業員代表の意見を聴いてから規則に盛り込みましょう。また、有給休暇の扱いも検討が必要です。有給取得者を皆勤から除外すると年休取得抑制になりかねないため、基本的に有給は欠勤とみなさず皆勤扱いにするのが望ましいです。インセンティブ制度は効果的ですが、公平性や他の手当とのバランスにも配慮し、従業員に納得感のある制度設計を心がけましょう。
勤怠管理の工夫と柔軟なシフト調整
勤怠管理(タイムマネジメント)の見直しも遅刻・欠勤削減に寄与します。具体的には以下のような工夫が考えられます。
シフトの柔軟化
パートやアルバイトは学生や子育て中の主婦など様々な事情を抱えています。通勤ラッシュを避けた時間帯にずらす、子どもの送迎時間を考慮する等、個々の事情に合わせてシフトを柔軟に調整してあげると遅刻の減少につながります。「どうしても朝は間に合わない」という人には遅めのシフトを組む、学校行事がある日は事前申告してもらうなど、可能な範囲で対応しましょう。従業員も「配慮してもらえている」と感じれば無断欠勤しにくくなります。
計画的な有給取得推奨
短時間のパートでも年次有給休暇は法定で付与されます。忙しい時期に当日欠勤されると困りますが、あらかじめ有給休暇を取得してもらえれば計画的な人員配置が可能です。そこで、有給を取りやすい雰囲気を作り、「用事がある日は事前に有給申請してね」と伝えましょう。当日朝に突然休まれるより、事前申請してもらった方が会社にとっても助かります。計画年休の制度なども活用し、無断欠勤を減らせるよう促してください。
勤怠管理システムの活用
打刻漏れやシフト忘れが原因で「来たのに無断欠勤と誤解された」なんてことがないよう、できれば勤怠管理システムやアプリを導入しましょう。出勤・退勤記録が明確になり、遅刻者にはアラートを出す機能などもあります。スマホで簡単に連絡できる仕組みを作れば、「連絡し忘れて無断欠勤扱い」も防止できます。ITツールの導入が難しければ、せめて欠勤連絡ルールを定めましょう(例:「始業〇分前までに責任者に電話」「LINEのグループで連絡可」等)。連絡しやすい環境を整えることが無断欠勤の抑止につながります。
代替要員の確保とバックアップ体制
人間ですから、ゼロにはできなくとも突然の欠勤は起こりえます。その際に業務が回らなくならないよう、代替要員の確保やバックアップ体制の構築も重要です。
クロス訓練(多能工化)
特定の人にしかできない業務があると、その人の欠勤時に大打撃を受けます。普段からパート同士で業務を教え合い、複数人が代替できるようにクロス訓練しておきましょう。例えばレジ打ちや簡単な調理補助など、ジョブローテーションを取り入れて皆が一通りできる状態にしておくと安心です。
シフトリーダーや予備要員の配置
可能であればシフトに余裕をもたせ、急な欠員時に呼べるスタッフを確保しておきます。学生アルバイトなどで「その日は本当は休みだけど呼べば出られる」人がいれば、事前に登録しておくのも手です。社員やベテランパートにリーダー的役割を持たせ、欠員発生時に迅速に穴埋め段取りをしてもらう体制作りも有効でしょう。
業務マニュアルの整備
急に別のスタッフが代わりを務める際、マニュアルがあればスムーズです。欠勤者の担当業務を他の人が引き継げるよう、平時から手順書やチェックリストを用意し共有しておきます。誰かが休んでも仕事が滞らなければ、他の従業員も安心して働けますし、無理な罰則に頼る必要もなくなります。
このように職場全体でカバーし合える仕組みを作っておくと、遅刻・欠勤が発生しても致命傷になりません。結果的に管理者側のストレスも減り、罰金で縛らずとも組織が回るようになります。
コミュニケーションと指導で改善する
罰金ではなくコミュニケーションによるアプローチも忘れてはいけません。遅刻や欠勤を繰り返す従業員には、まず原因を丁寧に聞き取り、個別に指導・フォローすることが大切です。
面談で本人の事情を把握
「どうして遅刻が多いの?」と頭ごなしに叱るのではなく、個別面談の場を設けて理由を聞きましょう。もしかしたら家庭の事情や健康問題、シフトの無理など、改善できる要因が隠れているかもしれません。原因がわかれば会社側で調整策を講じられることもありますし、本人も「心配してくれている」と感じます。無断欠勤があった場合も、感情的に責めず「何かあったのか」と安否確認を優先してください。
期待と責任を伝える
遅刻常習者には、「◯◯さんが定時に来てくれないと他の人が困ってしまうんだよ」「あなたの戦力を当てにしている」など、職場での期待と責任を改めて伝えます。本人に自覚と責任感を持ってもらうことで行動改善を促します。罰を恐れさせるより、「頼りにされている」という意識づけの方が人は応えようとするものです。
段階的な指導と記録
それでも改善しない場合は、段階的な指導に移ります。口頭注意→書面での始末書提出→就業規則に基づくけん責処分、といったように段階を踏み、指導の記録を残すことが重要です。記録は後で「何度も注意したのに改善が見られなかった」ことを示す証拠になります。最終的に懲戒処分(減給や出勤停止、解雇など)を検討する際にも、この経緯の記録が判断材料となります。
懲戒処分や最終手段としての解雇も検討(慎重に)
上記のような対策を講じても改善されず、業務に深刻な支障をきたす場合には懲戒処分を科すことも検討せざるを得ません。就業規則に定めた手順に沿って、減給処分や出勤停止などの懲戒処分を検討します。無断欠勤が続くようなケースでは、就業規則上の懲戒解雇事由(正当な理由なき無断欠勤が○日以上継続した場合等)に該当すれば解雇も法的には可能です。ただし、解雇は労働者の生活に直結する非常に重い措置です。客観的に見て妥当と言える理由があり、手続きも適正に踏んだ場合でなければ無効となるリスクがあります。解雇の前に口頭・書面での警告や懲戒処分を経ているか、改善の機会を与えたかなどが重視されます。
最終手段として解雇を検討する際は、社労士や弁護士など専門家に相談することをお勧めします。法律に沿った手続きを踏み、後々不当解雇で訴えられないよう十分注意しましょう。
よくある質問(FAQ)
最後に、パート・アルバイトの遅刻・欠勤と罰金に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめます。
Q: パートが遅刻や無断欠勤をしたとき、罰金を科すのはやはり違法ですか?
A: はい、違法です。 遅刻・欠勤に対する罰金制度は労基法第16条で禁止されており、就業規則に書いてあっても無効となります。罰金を給与天引きすると賃金不払いとなり、会社側が処罰される可能性もあります。遅刻や無断欠勤に困っても、罰金で懲らしめる方法は取らないようにしましょう。
Q: 遅刻した分の給与カットは問題ないと聞きましたが、本当ですか?
A: 原則問題ありません。 ノーワーク・ノーペイの原則により、働かなかった時間の賃金を控除すること(遅刻・欠勤控除)は合法です。ただし、実際には働いた時間の賃金までカットするのは違法です。例えば1時間遅刻したからと言ってその日の給与を半日分カットするのは行き過ぎた控除であり認められません。あくまで欠勤・遅刻相当分の給与のみ差し引くようにしましょう。
Q: 就業規則に「遅刻1回で罰金●円」と書けば有効になりますか?
A: いいえ、無効です。 就業規則に罰金規定を盛り込むこと自体が労基法違反となります。就業規則で定めて許されるのは減給処分です。ただし減給処分とする場合も、第91条の上限(金額制限)を超える罰金同然の規定は無効になります。また就業規則を社員に周知していない場合、その規定を適用できません。就業規則に書けば何でも許されるわけではない点に注意が必要です。
Q: アルバイトが無断欠勤を繰り返します。罰金以外に会社ができる対策は?
A: まずは懲戒処分と改善指導です。 無断欠勤は就業規則上懲戒事由(重い違反行為)に該当しますので、書面での注意やけん責処分を検討できます。繰り返すようであれば減給処分(就業規則と労基法の範囲内)を科すことも可能です。同時に、なぜ無断欠勤するのか本人の事情を聞き取り、必要ならシフト変更など対策を講じましょう。安易に解雇するのではなく、段階的に指導し記録を残すことが大切です。それでも改善されず業務に支障が大きい場合は、最終手段として就業規則の定めに従い解雇を検討することもありえます(要専門家相談)。
Q: 従業員が仕事中にミスをして会社に損害を与えた場合、その弁償として給与から引くのは問題ですか?
A: 原則として問題があります。 故意に会社に損害を与えた場合など一部例外もありますが、基本的に業務上のミスによる損害を従業員に全額負担させることはできません。判例でも、通常の過失による損害賠償請求は制限され、会社側にも責任がある場合は賠償額が減額される傾向があります。また、ミスの弁償として給与天引きすることは賃金全額払いの原則に反し違法です。どうしても重大な損害賠償を求めるなら裁判で個別に請求する必要がありますが、現実的には従業員との信頼関係が崩れるため慎重に判断してください。
Q: 皆勤手当はどのくらいの金額を支給するのが一般的ですか?
A: 金額は企業により様々ですが、月あたり数千円程度が多いです。 例えば1か月無遅刻無欠勤で5,000円前後の皆勤手当を出す会社もありますし、パートの場合は月3,000円程度のところもあります。中には日数に応じて日割りで支給する「精勤手当」形式を取る企業もあります。金額設定に迷う場合は、同業他社の事例や従業員のモチベーション効果を参考に、無理のない範囲で決めましょう。重要なのは金額の大小よりも「ちゃんと出勤すれば評価される」という仕組みを作ることです。
Q: パートが突然連絡もなしに来なくなり、そのまま辞めてしまいました。罰金や損害賠償を請求できますか?
A: 基本的には難しいです。 無断退職はマナー違反ではありますが、「◯週間前までに辞意を伝えること」という就業規則上の手続き違反であっても、あらかじめ違約金を定めることはできません(労基法16条)。したがって「無断退職したら〇万円の罰金」等は無効です。会社に実損害(人手不足で契約不履行など)が出た場合、個別に損害賠償訴訟を起こす選択肢もゼロではありませんが、立証も含めハードルが高いのが現実です。また、従業員が辞めたからといって未払いの給与や有休残日数相当額を支払わないのは違法です。退職時に会社側ができるのは、貸与物の返却請求や必要に応じて法的措置の検討(損害の程度による)くらいで、罰金で制裁を加えることはできません。
以上、パート・アルバイトの遅刻や欠勤に対する罰金の合法性と、現場で役立つ対応策について詳しく解説しました。違法な罰金制度に頼らなくても、工夫次第で勤怠トラブルは改善できます。 罰則よりもインセンティブやコミュニケーションを重視し、従業員との信頼関係を築きながら健全な職場作りを進めましょう。困ったときは社会保険労務士や弁護士など専門家にも相談し、法律を順守した適切な対応で会社と従業員双方にとって働きやすい環境を目指してください。
【参考資料】労働基準法(厚生労働省)・厚生労働省「モデル就業規則」・各種法律解説サイトなど
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